2001年 声明文・提言

 

人道的見地に立ち、李登輝・台湾前総統に入国ビザの発行を

 

元衆議院議員 上田 卓三
2001年4月17日

  日本政府は、李登輝・台湾前総裁のビザの発行について、人道的観点と国民世論の動向を見極めて決断すると報道されています。政府の立場は土壇場で良い方向に少し動いてたかに見えます。私はここ数年、いわゆる「杉原ビザ」によって多くのユダヤ人の命を救った日本人外交官・杉原畝氏を顕彰する活動をしてきましたが、その折に多くの関係者から学んだ教訓から、ぜひとも李登輝の病気治療のため日本訪問の実現を期待します。
  李登輝氏でも、サハリン州の子供でも、日本近海で遭難した中国・韓国漁民でも、人の命ほど大切なものはありません。高齢の李登輝氏が心臓病の高度医療を是非とも日本で受けたいと言うのなら、喜んでその機会を差し上げて、十分の治療をして頂こうではありませんか。日本に外国からも頼りにされる高度の専門家がいらっしゃることは日本国民の一人として誇りを感じます。
  中国政府が日本政府に圧力をかけているかの様な報道は本当でしょうか。中国政府と台湾政府の間が決して仲の良いものでないこと承知していますが、中国の一般国民が、台湾であれどこであれ、元総統であれ市井の庶民であれ、病気になれば少しでも良い治療を受けたいという人の気持ちを理解出来ないなどとは想像できないのです。中国の政府にしろ国民にしろ、おそらく怒っているとしたら、教科書問題で中国の感情を逆なでしておきながら、これ以上日中関係を悪化させないという理由で、李登輝氏のビザ問題を扱っているかに見える、何とも首尾一貫しない日本政府の姿勢に対してではないでしょうか。
  李登輝氏は日本に大変な好印象をお持ちのご様子ですが、それだけに心配な事があります。人間年をとればとるほど精神と肉体の微妙で深い関係を理解させられます。今回の事態で相当血圧も高くなっているものと拝察します。もし万が一、李登輝氏の希望する日本での治療が出来なくなり、その結果、精神的に深い衝撃を受け、さらには病状が一段と悪化する事態になったとしたら、日本政府はあるいはそのことを許した日本国民は、李登輝氏ご本人とご家族はもとより同氏を深く敬愛する台湾の市民、さらには国際社会にどの様な責任をとるのでしょうか。
  人間をイデオロギーと体制で判断したのが20世紀の深い病でした。21世紀は人間の尊厳を目的にする、自由と人権の世紀であれと切望します。森総理と河野外務大臣ら政府要人の方々が最終決定をなさる時、2000年10月10日の「杉原千畝氏顕彰プレート除幕式」での河野外務大臣の次のご挨拶の言葉を是非とも想起して頂きたいものです。
「日本外交に携わる責任者として、外交政策の決定においては、いかなる場合も、人道的な考慮は最も基本的な、また最も重要なことであると常々私は感じております。故杉原氏は今から60年前に、ナチスによるユダヤ人迫害という極限的な局面において人道的かつ勇気のある判断をされることで、人道的考慮の大切さを示されました」

 


すべての納税者に「確定申告権」を
納税者のための「権利宣言・権利保障法」の制定を

 

元衆議院議員 ティグレ会長 上田 卓三

  税制改革は、つねに時代(とき)の政権の意向に左右されてきました。衆議院議員の大蔵理事として当時の税制改革に関わった経験からしてもそうです。納税者は国民です。税制改革は国民・納税者の立場に立った、国民・納税者が納得できる改革でなければなりません。
  小泉純一郎・首相、塩川正十郎・財務大臣は、「聖域なき構造改革」を掲げています。構造改革のなかでも財政改革は大きな柱です。財政改革は税制改革と連動しています。小手先の「税制改革」ではもはやだめです。
  税制改革の第一の柱は、「納税者主権」の確立です。聞きなれない言葉ですが、欧米諸国では、「納税者の権利」と法律で保障しているのは当たり前なのです。お隣の韓国では、1997年に「納税者権利憲章」を制定しています。この分野では、日本は本当に遅れているのです。
  税制改革の第二の柱は、サラリーマンを含む全ての納税者に「確定申告権」を確立することです。現在、サラリーマンをはじめ国、地方公務員など約4700万人の人が、給与から天引きされる源泉徴収制度によって税金を納めています。この源泉徴収制度そのものを見直す時期にきています。
  納税の法的「義務」があるのであれば、納税者の法的「権利」も認められるべきです。戦後税制の原点といえる「シャウプ税制勧告」では、「納税を実感することが民主主義の原点である」と強調しています。納税者が「主人公」となる税制改革の実現を強く求めます。

 


米国同時多発テロ−「文明の衝突」にすり替えてはならない

元衆議院議員 上田 卓三
2001年9月21日

 9月11日、米国の中枢を同時多発テロが襲った。ハイジャックした民間航空機を武器に高層ビルに突撃した行為は、米国だけでなく世界中を震撼させた。死者・行方不明の犠牲者は日本を含めて62ヵ国・地域、6千数百人にのぼるといわれ、未だにその数は増えつづけている。犠牲になった旅客機の乗客・乗員、一般市民、消防・警察職員などの方々に哀悼の意を捧げたい。また、救助活動に懸命に取組んでいるジュリアーニ・ニューヨーク市長をはじめ関係者の方々の努力に敬意を表したい。
  今回の事件は過去のテロの領域を超え、戦争にも匹敵する規模の衝撃と破壊を米国民と世界に与えた。「戦争の世紀」といわれた20世紀にあって世界は、非戦闘員や一般市民と武装兵士を区別し、無差別攻撃や大量殺戮に反対する「倫理」を守りきれなかった。その反省から国際社会は、いかなる文明や社会にあっても、市民が秩序と平穏の中に生きる権利を大切にし、自由と民主主義、人権を国家と国境を超えたルールとして尊重する「精神」を学んできた。それ故にナチスドイツのホロコーストが弾劾され、それに抗して多くのユダヤ人の命を救った日本の外交官・杉原千畝の人道主義が称えられている。今回の無差別テロは、人類が築き上げてきた人道や文明に対する挑戦に他ならない。
  最近の米国はミサイル防衛網構想、京都議定書のボイコットなど、孤立主義や独善の姿勢が危惧されていた。米国主導の経済のグローバル化とIT(情報技術)革命は世界の繁栄に資する一方で、グローバルスタンダード(世界標準)とは結局のところ、アメリカンスタンダードの押付けではないのかという反発が起きている。冷戦終結後、世界各地で民族主義や宗教対立が頭をもたげ、以前よりも紛争が頻発する事態となっている。「平和の配当」を享受できず、経済や貧富の格差、宗教や民族の違いからくる価値観の相違から、世界の発展に取り残された人々の不満や怒りが高まっている。
  だが、そうした不満や怒りを温床として利用し、無差別テロを正当化し、「戦争」を仕掛ける勢力に理解を示すわけにはいかない。テロの問題を、イスラム教対キリスト教、イスラム教対世界、中東アラブ圏対主要先進諸国(G7)などという「対立の構図」にすり替えてはならない。それこそが、国際テロリストグループが狙っていた罠である。対決しているのはあくまで「テロ対世界」であり、「文明の衝突」ではない。
  米国の軍事行動が切迫しているが、それだけではテロ根絶の目的は成就しない。日本としては中東圏へ教育、医療・福祉など経済援助や難民支援の手を差し伸べることが大事だ。テロの背景には経済格差と貧困が横たわっており、イスラム原理主義「過激派」が浸透する大きな要因だからである。また、日本外交は「人道と寛容」の方針を鮮明にして質的転換を図り、従来から関係の深い中東地域の和平へ積極的に貢献すべきだ。そうした点にこそ、憲法により自衛以外の武力行使を禁止している日本の果たすべき国際的役割がある。

 


「狂牛病」問題に対する声明
―政府に徹底検査、原因究明、責任所在、被害補償、再発防止を求める―

元衆議院議員 上田 卓三
2001年12月10日

 9月10日以降今日まで、牛海綿状脳症、いわゆる「狂牛病」に感染した牛が国内で3頭確認された。発生地といわれるイギリスで今日までにおおよそ18万頭が感染している状況から見て、国内感染牛の発見は今後ますます増えることはまちがいない。とにかく徹底した検査実施をおこない、感染牛の完全把握を例外なくおこなうべきである。同時に、肉骨粉の流通ルートを疫学的に特定し、感染の根本原因を一刻も早く解明することが重要である。
 農林水産省は、感染源が「狂牛病」の牛を原料にした肉骨粉だと判断し、牛の肉骨粉を牛に与えることを1996年から禁じていた。その一方で豚、鶏肉には使用を許し、牛の肉骨粉の流通そのものを放置するという中途半端な規則が、今日の「狂牛病」感染牛を拡大させていった原因である。また、2000年末に「欧州連合・科学運営委員会」が日本での「狂牛病」の発生の危険性を指摘したことに対し、農林水産省がその指摘を握りつぶしていた事実も存在している。
  まさに政府の「事態」に対するあいまいで手遅れな処置、海外情報の歪曲・隠蔽工作、早くから「狂牛病」発生の危険性を指摘していた学者の意見書をも無視し続けていたことが、「狂牛病」問題をより拡大化させたといえる。今回の政府の不作為の構図はまったく「薬害エイズ問題」に似ている。政府が薬害エイズ問題の教訓をまったく学んでいなかったことに強い憤りを感じざるを得ないとともに、政府に責任の所在を徹底して求めていく必要がある。
  今後、人体への影響が心配である。イギリス政府の「狂牛病」諮問機関が「狂牛病」の牛を食べた人を、新変異型のヤコブ病として公表している。現在、イギリスで107人、フランスで3人、アイルランドで1人の患者が存在している。また、イギリスの科学雑誌『ネイチャー』では、「イギリスで新変異型によって13万人以上死ぬかもしれない」と報じている。厚生労働省は、「種を超えた人への感染」について「第二の薬害エイズ」にならないよう医学会と連携し、新変異型のヤコブ病の解明と対処策を早急に確立すべきである。
  政府の「安全宣言」以降、感染牛が相次いで発覚したことによって、牛肉に対する消費者の不安・不信を更に増幅させていった。その結果、食肉・食品関連業界および外食産業に甚大なる損失を生じさせている政府の責任は大きい。特に中小零細企業は存亡の危機にある。早急に政府の責任において緊急融資等の総合的な対策が急務である。
  政府の監督行政である農林水産省・厚生労働省は、無責任な縦割り行政の弊害を乗り越え、食品の安全性について、「国民の安全と利益」を最優先とした対策を組むべきである。イギリスは政府の責任において感染の疑いのある牛および在庫牛肉の全てを即刻焼却処分したり、牛エキス等に対して監視体制を強化し、牛肉に対する国民の不信・不安の払拭に全力をあげている。日本政府もおおいに参考にすべきである。真の「安全宣言」を出すためにも、感染原因の確定、感染牛ならびに感染牛肉の完全処分、二度と起こさない再発防止策の確立が急務である。